2006年1月31日 (火)
長い長いさんぽ
可愛い絵柄で描かれたペットの死という現実
著者:須藤真澄
価格: ¥756(税込)
出版社: エンターブレイン
作者の須藤真澄は、「アクアリウム」「振袖いちま」「電氣ブラン」のような、ファンタジーコミックの作家として定評があり、中には映画化(「アクアリウム」特別出演がミッキー・カーチス!)された作品もあるほどの実力派です。その一方で、エッセイコミックも数多く手がけていて、「ゆず」シリーズはその中のひとつでした。
ゆずの可愛らしさと猫らしい気まぐれに翻弄されつつ溺愛する様子を、面白可笑しく描いたエッセイコミックの完結編に当たるのが表題作の「長い長いさんぽ」です。長い長いさんぽとは、家からペット用の火葬場までの道のりのこと。本作は、動物を飼うとどうしても避けられない、ペットとの死がテーマとなっています。
ゆずが死んでしまうとき、旅行に行っていたために看取ることができなかった、罹っている病気についての知識がなかったなどの後悔から、作者はゆずの死がどうにも受け入れることができません。ゆずの死体を焼く段になって、思わず腿をたたいてゆずを呼んでしまうのです。
ペットの死に対して、どう踏ん切りをつけるのか──。
作者ここで、思い切って踏ん切りをつけない決断を下しました。
焼いた骨と灰を選り分け、純粋にゆずのものだけを骨壺に納める。その様は、可愛い絵柄でも隠しきれないほど、鬼気迫るものがあります。どうしてここまでするのか、こればかりは作者にしかわからないことで、またペットを飼ったことがないボクにはわかりようもありません。
しかし、ここにはペットの死という敢然たる現実があります。
ペットとの死別、そして異常な弔い。現実と異常性の交錯を見事に描ききった作者の技量が見事です。
そんな中にもユーモアを織り交ぜてしまうバランス感覚もいい。
(加藤)
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