2006年4月 2日 (日)
あたしの一生―猫のダルシーの物語

ただただ純粋な、愛の物語
著者:ディー レディー (著)、江國 香織 (翻訳)
価格: ¥1,365(税込)
出版社: 飛鳥新社
猫ダルシーの一人称で進められていくこの物語は、 “飼い主(著者:ディー・レディー)”の名前は一度も出されず、“あたしの人間”と表されて話は進む。「ダルシーとあたしの人間」の関係は「ペットと飼い主」ではなく、「個と個」の関係。甘え、嫉妬し、怒り、悲しみ、愛し合い、濃密な2人の生活が細やかな描写で書き綴られる。
それらのあまりにストレートな愛情表現に、涙があふれてきた。猫は「クール」だとか「なつかない」なんてよく言われるけれど、私は常々、絶対にそんなことはない!と思っていた。猫ほど愛情表現の豊かな動物はいないんじゃないかと思っていた。この本を読んでその思いが確信に変わった。
不器用だけど、まっすぐなダルシーの愛。それは、息を引き取る最後の最後まで“あたしの人間”に与えられる。
命あるものと生活するということは、「死」に直面しなければならない時がくるという事でもある。頭の片隅では分かっていても、考えないようにしている自分がいる。でもその時は確実にやってくる。それまでにどれだけ愛情を伝えられるだろう。どれだけ思い出を共有できるだろう。愛猫をダルシーに重ね合わせ、また涙が溢れた。
愛について、死への覚悟について、残された時間について…考えさせられる時間をこの本に与えてもらった気がした。
(竹田)
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